宇都宮発・・・石の町大谷を歩く


suc4-b01 2005/2/5
10時10分JR宇都宮発立岩行き
バス乗った。
目的地は、あの大谷石で有名な大谷町。
おそらく、大谷資料館前あたりで降りて
大谷町を歩く探検が始まるのだろう。

立春を一日過ぎて2月5日。抜けるよう
な真っ青な空が広がって風も無く最高の
外出日和。

JR宇都宮駅西口を出発したバスは、6
分で「東東武」バス停へ到着した。7人
いた乗客は私一人を残して降りてしまっ
た。
国道121号線をバスは快調に進んで行
く。
次々と停車場をアナウンスしながら走る。
「次は作新学園前」・・ここまで11分。
よく見れば学校の塀は大谷石のブロック
で積まれている。
そこから先の家々の塀も大方が大谷石で
有ることに気付く。

「東中丸」で男一人が乗り込んで乗客は
2人になった。
次は「中丸」・・次々に流れ行く車窓に
見える石塀や石段や斜面のブロックも皆
大谷石だ。

暖かくて気持ちいいバスの揺れと時折流
れるアナウンスが私の神経を包み込んで
行く。大きなあくびが繰り返しおそって
くる。





ふわふわとした夢心地を楽しみながらぼんやりと車窓の目をやり続ける。

「中丸公園」を少し過ぎたあたりの右手に大谷石の鳥居が見えた。
なんと目珍しい。強度は大丈夫なのだろうか。・・
「城山出張所前」・・10時30分・・

石材店が目立ちはじめて、「大谷観音前」を過ぎて、「大谷資料館前」のアナウンスを聞いて
降車ボタンを押した。
バス代は440円。料金箱の料金を入れて降りようとする私に運転手さんは、資料館なら少し
歩いて右手ですよ。・・と教えてくれた。







30年程前になろうが、大谷町を案内
していただいた事の記憶はあるが、町自
体の記憶は全く消え失せてしまっている。

ふと見上げた空にそびえたっていた石の
山が大谷石の固まりで有ることを察した。

明らかに人が切り取った痕を荒々しく残
した山肌は痛々しくも見えた。

橋を渡って、資料館へと向かう。道端に
は朽ち果てかけて今にも植物に飲み込ま
れそうな廃屋があった。

大谷の石切場跡が観光資源として価値の
あった時代のお土産屋などだろうか。
そんな様子に賑やかだった頃を想像しな
がら資料館へと足を運ぶ。

削り残された山際に河童の様な顔のお地
蔵さんが立っていた。

3百メートルほど歩いただろうか、広
い駐車場のある資料館へたどり着いた。
大きな山がざっくりと切り取られた空間
だった。

早速資料館の中へ入る。入場料金600
円也を支払って大空間の入り口の戸を開
けて階段を下りる。

ひんやりとした空気が徐々に体温を奪い
始めるのが分かる。

階段を少し下ると途轍もない大空間が広
がっていた。
瞬間、以前ニュースで見た大谷採石空間
の陥没を思い出した。



まばらに照明された空間は不気味に口を
開けた地獄のようにも見えた。私一人が
飲み込まれて消えてしまっても誰も見て
いない。・・
おそるおそる急な階段を奈落の底へと下
りていく。

空気は腹を空かせた獣のように私の体温
どんどん吸い取っていく。

裸電球の薄暗い闇の中。この大空間を埋
めていた石を男達の汗が削り取ったのだ
ろう。
人間の執念が作り上げた空間かも知れな
い。

奈落の底を這いずり歩くこと20分あま
り、体温はどんどん吸い取られて行く。
ふと天を見上げると地上に開いた小さな
窓が太陽の光を透している。奈落の底か
ら見える地上世界の光に感じた。

更に10分ほど歩き回るが誰もこの世界
へ降りては来ない。本当に異次元空間へ
私は迷い込んだのではないだろうかと心
配になる。

冷たくそそり立つ壁には荒々しい機械の
爪痕が規則正しく刻まれている。
以前は裸電球がぼんやりと明かりを放っ
ていただろう傘のついた電球ソケットが
赤錆た鉄の配管の先に残っていた。

私の足音が壁に反響して不気味な空間に
こだまする。

異次元空間に落ちてしまわないうちに地
上へ戻ろうと早足で元来た石段を上る。

空間が見渡せる場所まで上ると、人の声
が聞こえてきた。
ホッと我に返って安堵する。
どうやら観光バスの団体さんの様だ。

早足で階段を上りきり、冷え切った体温
をストーブで暖めた。









少し川の上流へと向かう。
川には大きなハヤがのぼり下りしていた。

あちこちに切り崩された山が見られる。
活気はなく、まるで遺跡の様な寂しい殺
風景に見える。

その跡地には腐った板きれに 危険立入
禁止 と書かれているが、人が立ち入り
出来ないような頑丈な柵は無い。


道のあちこちには埃にまみれた建設機械
や石切場の廃墟が残されている。
勿論、使い物にならない低質の石も投げ
出されたままになっている。

そんなところに目をやっていると、至る
所に違法投棄されたゴミが目立つ。

まさか、地下の大空間に違法投棄のゴミ
が埋まることは無いだろうとは思うが、
ふと心配が過ぎった。

石が大谷に多くの富をもたらした。その
富を生んだ跡は少しでも綺麗にして欲し
いと願う。


元来た道を資料館まで戻る。ここから
川沿いに歩いてみた。

石切場の空間を利用した料亭があった。
大谷温泉とも書かれていた。
廃墟と化した大きな山の上の建物があっ
た。

その廃墟の脇で大きなボーリング機械が
温泉を掘削していた。


ふと、左に振り返ると大谷観音の穏やか
な顔が柳の枝の向こうにあった。

廃墟と化した採石場の荒れた跡地とは対
照的な柔らかい曲線がとても暖かく感じ
た。


大谷観音へ向かう。

川を渡って、大谷寺の前に出た。大谷寺
の仁王門には見事な木彫の仁王さんが道
の端の私を睨んでい
た。
お土産さんの前を通って大谷観音が立つ
公園に出る。柳の枝越しに見た優しい顔
の大谷観音が立っていた。

観音様は女性に決まっていると思ってい
たのだが、大谷の観音様はちょっと男顔
かな?・・そうそう、つりの好きな俳優
さんに似ていません。

今日の大谷町取材はまだまだ続いたんです
が、これ以上書いても誰も読んではくれな
いだろうと・・ここらでお終いにします。

ちょっとだけ書き添えますと、更にブラブ
ラと鎧川のバス停まで歩いてみました。

裏通りを歩いたり、さらに寄り道をしたり
・・・大谷石の立派な住宅や蔵や倉庫など
沢山発見しました。

そうそう、うなりを上げて大谷石を裁断す
る機械も見ました。

足は棒状態ですが、日頃の運動不足解消に
は多少なった様な気がします。
お陰で大谷で予定していた昼食が宇都宮に
なってしまいました。

3時から書き始めた取材記もここらで疲れ
てきましたので、この辺で・・・・


付録・・・大谷町散策スライドショー

付録の文字をクリックしてください。


親子かえる

その昔ある聖僧が仏教を広げるため各地
を歩いておりますと、このあたりに蜂の
大群が住み着き、住民を苦しめていると
の話を耳にされました。聖僧は住民を助
けようと3721日の苦行を重ねて観音
様を作り上げました。
その時、蜂の大群がこの村に攻めてきま
した。
すると、どこからともなく「親子がえる」
が現れ岩肌にしがみつき蜂の大群と戦い
身をもって住民を守ったといわれていま
す。それ以来住民は蛙に感謝し、今も地
守神様として子孫にいい伝えて降ります。
宇都宮観光コンベンション協会